「自分が亡くなったら全財産を妻に相続させ、自分の次に妻が亡くなった時には3人の子のうち確実に長男に当該財産を引き継がせたい。」
というニーズは結構あります。
しかし、そのような内容の遺言書を作ることはできません。なぜなら、遺言では、自分が亡くなった時の財産の承継先しか指定することができず、その後(二次相続以降)の指定はできないからです。
この夫の願いを叶えるには、夫の遺言とは別に妻も「自分が亡くなったら全財産を長男へ」という遺言書を残す方法も考えられます。
しかし、夫が妻にそれを強要はできませんし、もし妻が夫の望み通りの遺言を書いてくれたとしても、夫の死後に妻や他の子供達の要望によって遺言が書き換えられる可能性もあります。
そして、妻が既に認知症等で判断能力に問題が生じていた場合は、そもそも遺言自体することができません。
また、「自分が亡くなったら先祖代々の土地は長男へ。その後長男が亡くなったときは長男の嫁ではなく確実に孫に継がせたい。」
という遺言書を作ることはできません。遺言では先々の財産承継についての指定はできないからです。
ところが、家族信託という仕組みを活用すれば、これらの想いをかなえることが可能です。
このような信託を、特に「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」と呼びます。
自分の財産を信託財産として『委託者兼受益者:自分,受託者:長男』とする信託契約を長男と結びます。
そして、その契約の中で、自分が亡くなった後は妻が受益者となり受託者である長男から生活費や医療費の給付を受けるようにし、
次に妻が亡くなった時にはこの信託を終了して残余財産を全て長男に承継させる旨を予め決めておきます。
受益権の承継者を何代か先まで指定しておくということは、実質的には財産の承継者を何代か先まで指定しておくのと同じです。
民法で無効とされている「二次相続以降の財産承継者の指定」を実質的に可能にする手段として、家族信託を活用することで、思いをかなえることができます。