事業承継への家族信託の活用

世の中では、事業承継についての様々な本やセミナーなどがあります。例えば、種類株式を活用した事業承継などはその典型例です。

ところが、最近では、家族信託も事業承継の一つの手法として注目されています。

私が受ける相談の中には「後継者に株式を譲りたいが、株価が高く、生前に渡すと贈与税が高いのでできない」とか「後継者に渡すことは決めているが、まだまだ早い」とおっしゃる方などがいらっしゃいます。

しかしながら、これらの悩みは、家族信託を使うことで対応ができます。

〇株式の家族信託とは 

株式の家族信託とは、その名のとおり、株式を持っている人が自らの持っている株式を信頼できる家族等に信託することをいいます。

例えば、創業者の方(父親)が後継者である社長(息子)に対して、株式を信託することで、議決権の行使など会社経営に関する様々な権限をスムーズに渡すことができます。また、その際に、株式の配当などを受ける権利は自らのもとに残すことで(これを「自益信託」と言います)、譲渡にかかる贈与税等を生じさせることなく、議決権を後継者に委ねることが可能となります。

また、後継者の議決権の行使についても「指図権(株式の行使にあたって、自らの指示によることを指図する権利のこと)」というものを設定することで、元気なうちはしっかりと監督をしつつ、円滑な事業承継をすることが可能です。

このように、家族信託を使うことで、先にあげた問題点を解消しつつ、円滑な事業承継を図ることが可能となります。

「家族信託」といえば、実家などの不動産のことがよく言われますが、この家族信託というのは事業承継にも活用できますので、ぜひ検討してみてください。

 

【参考】

〇中小企業庁HP(「信託を活用した中小企業の事業承継円滑化に関する研究会」まとめ)

http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2008/080901sintaku.htm