親なき後問題対策

1.自分が亡くなったあと、子供の生活が心配

「 自分がしっかりしているうちに、子供の将来の生活を保障したい」
こんな話をよく聞きます。
ここで活用できるのが、家族信託です。

以前のコラムでも書きましたが、自分が亡くなった後、子供の生活をみてくれる人に財産を託し、子供に定期的に財産を引き渡すことで安定した生活を保障することができます。

家族信託は、将来親御さんが亡くなった後に親の財産を障がいのある子に確実に渡すため、あらかじめ生前に親と信頼できる人(親族や兄弟・姉妹)に財産を託し、財産管理をしてもらうための制度です。
2.福祉型信託の活用例

(1)状況

お母さん(以下、Aさん)には4人の子供がおり、障がいのある子(以下、Bさん)がいます。
現在、AさんとBさんは同居しており、Bさんの面倒をAさんがみていますが、自分が亡くなった後、Bさんの生活が心配です。長男(以下Cさん)とBさんは仲が良いから、

自分が亡くなった後はCさんがBさんのことをみてほしいと思っています。Cさんもこのことは了解済です。

 

(2)組成例

Aさんの目的は、自分が亡くなった後のBさんの生活を保障することです。

そこで、Aさんの財産を信託し、Aさんを委託者、受託者をCさん、第一次受益者をAさん、Aさんが亡くなった後は、第二次受益者をBさんに設定します。
そして、Aさんの死後、Bさんがもらうべき遺産を代わりににCさんが預かり、毎月Bさんへ少しずつ渡すように取り決めをします。

 

(3)家族信託のポイント

遺言で財産を残すことも可能ですが、遺言は原則として、相続が発生した後の財産の帰属先を決めるものです。

そのため毎月いくらの財産を引き渡すことや、財産の引渡しを管理する人を確実に指定することができません。
一方、家族信託では、受託者を指定することで、長期間の財産管理が可能です。
その他、今回のケースでBさんが身体に障がいがあるケースだったらどうでしょう?
成年後見制度は判断能力が衰えてきた方が利用できる制度であり、身体に障がいがあるというだけでは利用することができません。
このようなケースでも家族信託を利用して、Bさんの財産を適正に管理することが可能になります。