不動産の管理・処分への家族信託の活用

共有名義の不動産をお売りになりたいと思ったときでも、共有者全員の同意がない限り、勝手に不動産を売ったりできません。仮に持分の割合が9対1で、こちらが持分10分の9を持っていたとしても同様です。

共有名義の不動産を賃貸したいと思った時はどうでしょう?

賃貸の場合、持分割合の過半数を取得している方でないと、他の共有者の方の同意なく、共有不動産を勝手に貸すことはできません。例えば、共有不動産のご名義がA(持分3分の1)・B(持分3分の1)・C(持分3分の1)の場合、Aが第三者に賃貸したいと思ったときに、最低でもBまたCのどちらかの承諾がないと勝手に賃貸することはできません。

従いまして、不動産が複数人の共有名義となっている場合には、何をするにもその都度、他の共有者の印鑑が求められ、処分や管理が面倒で、共有者の一人に相続が発生すれば更に共有者が増えるなんてことも想定できます。

ところが、家族信託という仕組みを使えば不動産の共有問題が解決できる可能性があります。

例えば、収益マンション1棟が、A・B・C(持分各々3分の1)共有名義になっているとします。

この場合、まずはA・B・C全員で話しあっていただき、今後不動産を管理処分する人(受託者)を決めていただき、受託者をAに決めたとして、

不動産を賃貸した場合の収益であったり、不動産を処分したときの売却益を取得する人(受益者)をA・B・Cと決めたとします。

上記のように、受託者をA、受益者をA・B・Cで信託契約を締結した場合には、

今後、収益マンションの一室を第三者に貸したり、収益マンションを売却する場合に、A一人の印鑑で第三者に貸したり、売却することができます。

共有者A・B・C全員が収益不動産の近く居住していれば、すぐに印鑑を押してもらえるかもしれませんが、遠方に住んでいる方がいる場合は印鑑を集めるのも一苦労です。

もちろん受託者は法人がなることもできますので、一般社団法人を作って、受託者を一般社団法人とし、A・B・Cを一般社団法人の社員兼理事とすることも可能です。

また、受託者をAにしたけど、Aが信託契約に従って収益マンションの管理・処分してくれるのか不安という場合もあるかもしれません。その場合、Aを監督する信託監督人を置くこともできますので、A・B・Cが信頼できる方や専門家に信託監督人なっていただくのも良いかもしれません。

ただひとつ言えるのが、信託とは、信頼できる方に財産を信じて託し管理処分してもらうことなので、信頼できる方がいない場合は、そもそも信託契約をするべきではありません。

このように家族信託を使うことにより、不動産の共有状態を実質的に解消することも可能となる場合があります。